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卒業論文って?

ノルディックスキー・ジャンプ女子の髙 梨沙羅選手が、今年、日本体育大の飛び級入試に合格して話題になりましたね。特定の分野において才能を発揮する人材の早期入学を認める飛び級入学。最近取り上げられる機会が増えています。制度の内容を詳しく見てみましょう。

京都大学も飛び級入試を開始

京都大学が「医学部への飛び級入学を認める」と発表し、大きな話題となったことは記憶に新しいところです。気になる出願基準は「国際科学オリンピックの出場経験者であること」と発表されています。具体的には、数学・物理・化学・生物の国際科学オリンピックに日本代表として出場した高校2年生であればOKとされており、入学後も「最初の1年間大学院生などをサポート役につける」と明言しています。
大学側の意図は明確です。医学部長は「世界の医学研究をリードするような学生がほしい。多少とんがった人材を求めたい」と取材に答えています。溢れるほどの資質を持った学生をいち早く、確実に囲い込みたいと考えているのです。また、京都大学が飛び級入試に踏み切ることで、追随する大学が増えてくることも予想されます。
平成26年度入試において「飛び級入試」を実施しているのは次の大学です。
千葉大学(国立)文学部・理学部・工学部
名城大学(私立)理工学部
成城大学(私立)文芸学部
エリザベト音楽大学(私立)音楽学部
会津大学(公立)コンピュータ理工学部
日本体育大学(私立)体育学部

飛び級入試のメリット・デメリット

飛び級入試は、千葉大学が平成10年度よりスタートさせて以降、それほど広がりを見せていないのが現実です。飛び級入学のメリット・デメリットから、その魅力と問題点について考えてみましょう。
★メリット
ニュートンやアインシュタインなど後世に名を残している大科学者は、25歳前後で主だった業績を挙げているそうです。その観点で見ると、18歳の1年間を受験勉強のみに費やすのはもったいないと考えるのも当然です。才能のある人材に、早い段階で最高の学問環境を与えることで、優秀な科学者として育成しようとする明確な意図を大学側は持っています。
国立大学で唯一飛び級入学を行っている千葉大学の担当者は、新聞の取材に対し「専門的な勉強を早く始められ、若くして研究者の道に進める。一般の学生より1年余裕がある分留学もしやすい」「好きでたまらないことに取り組む学生は間違いなく伸びる。高校の先生や親の反対を押し切って飛び入学の道を選んだ学生たちだから、意見をはっきり言うタイプが多い」とメリットを説明しています。千葉大学では2013年3月までに53人の飛び級入学者が卒業し、その大半が大学院に進学しているそうです。大学も3年で早期卒業し、大学院にも飛び級入学した卒業生も多いと言いますから、彼らが大学入学時に飛び級入学を利用した目的が、この結果からも明確になっていることがわかります。博士号を取得した者が10名(千葉大・東京大・京都大・米マサチューセッツ工科大など)、大学教員になった者が3名いるとのことですから、将来の目標がはっきりしている人にとっては、飛び級入学によるメリットは大きいものと映ることでしょう。
スポーツや他の分野でも同じことが言えます。「超高校級」の才能を持った学生が、18歳で世界を目指すという事例は珍しくありません。テニスやスイミングあるいは音楽スクールに通うこと、サッカーのクラブチームに所属するなど、能力に合わせた最高の指導を受けられる環境を求めるのは、彼らにとって当然のことです。その選択肢の一つに大学は入るべきで、そうしなければ将来、大学の価値そのものが下がってしまうという危機感も持たれはじめています。
★デメリット
高校3年生は、人生の中で最も思い出に残る1年間の1つに挙げられるほど、充実した毎日を過ごすことができる貴重な時間です。最後の体育祭や文化祭で泣き笑いした経験を、一生の宝としている人も数多くいます。学力や才能だけを重視して飛び級入学をさせ、その貴重な1年間を経験させないまま次の進路に進ませることに警鐘を鳴らす大人がいることも事実。「能力は高くても人間的にゆがんでしまうのではないか」「専門知識はあっても社会性に欠けてしまうのではないか」「年齢差や社会経験の差などから、他の学生との人間関係で悩むのではないか」という心配をするのも当然かもしれません。
また、飛び級入学が広がらない理由として、飛び級入学をすると高校中退になり、大学を途中で辞めると最終学歴は中卒となってしまうことをリスクに挙げる人が多くいます。昭和女子大学では、2005年度から導入した飛び級入学制度を、2014年度から中止しています。特に女子はリスクを重く受け止める傾向があるようです。同大学では導入以来、志願・合格者は2008年度の1名のみといいますから、飛び級入学による効果があったとは言えない結果に終わったようです。

飛び級入学の環境が整備されるのはこれから

飛び級入学は進学する学生の資質に関心が集まりがちですが、送り出す高校側と受け入れる大学側の連携が不可欠であり、この連携がうまくいくシステム作りが今後の課題です。うまくいかず退学となった場合、学生には大きなリスクが伴います。その悲劇を生まないように学生を長期的にフォローする仕組みを作ることが急がれます。例えば国際的なコンテストに出場した生徒については、事前に合宿指導を行うなどして大学側が生徒の意欲・能力はもちろん社会性まで含めて把握し、手間がかかることは承知の上で大学教員が長期的にフォロー していくことが必要です。スポーツや音楽といった分野では、これまで長期に渡って生徒を指導してきた指導者(高校外を含む)と大学側の情報交換も必要となるでしょう。
何らかの才能を活かして飛び級入学を考える場合には、よい環境と優秀な仲間・ライバルの存在に目がいきがちですが、その受け入れ体制にも注目したいですね。1歳とはいえ、その年齢差が日常生活に大きな影響を及ぼす場面は想像以上に多いものです。安心して生活できる環境があって、初めて大学生活も充実したものになるのです

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