高校受験もしくは中学受験の際、様々な模試を受けて偏差値で自分の実力を測ったことがあるでしょう。模試の結果を受けて、塾の先生から「君の偏差値は○○だから、A高校なら安全圏だけどB高校だとチャレンジになるよ」といったアドバイスをもらった人も多いのではないでしょうか。
皆さんにとって偏差値は聞き慣れた言葉だと思います。ですが、はたしてどのくらいの高校生がその意味を正しく理解しているのでしょうか。割合は決して高くないはずです。もしかすると、皆さんの中にも、偏差値は「学校のレベルを数値化したもの」と捉えている人がいるかもしれませんね。
偏差値の意味を簡単に紹介すると、
受験者全体の平均を「偏差値50」とした時の自分の位置(平均からどれだけ離れているか)
となります。
ですから、自分の受けるテストの種類や質によって偏差値は大きく変わるのです。
大学入試になると、模試の種類が「センター模試」「記述模試」「△△大模試」などと、これまでとは段違いに多くなります。こうなってくると、自分の偏差値はもちろん、模試ごとに示される「大学の合格可能性」も、その数値の意味するところが毎回違ってくるので注意が必要です。
では、東京大学志望のT君を例にあげて考えてみましょう。東京大学に合格するためには、「センター試験」と「東京大学の二次試験」の2種類の試験を突破しなければなりません。
まず、T君はセンター試験受験者のための「センター模試」を受験しました。この時結果として出た彼の偏差値は68、東京大学のA判定ラインは偏差値73でした。ところが、後日受けた「東大模試」の結果によると、T君の偏差値は52、A判定のラインは61というデータが返却されてきました。2種類の模試の結果は、なぜこれほどまでに違うのでしょう?
T君が最初に受けた「センター模試」は、国立大学受験を考えている人はもちろん、私立大学(センター利用)受験を考えている人も受験をします。ですから、模試を受ける母集団はかなりの大人数となり、受験者のレベル差も大きくなります。この場合のT君の「偏差値68」は、「センター試験受験を考えている人の中では、かなり上位にいる」ことを意味します。この結果でわかることは、「本番のセンター試験を受験した場合、おそらく上位の得点を取ることができるだろう」ということだけで、東大の合格可能性を正しく判断することはできません。
次に、「東大模試」は、東大受験を考える人が受ける模試です。その母集団は「センター模試」の時とは全く異なります。東大の合格可能性について判断する精度は上がりますが、その代わりセンター試験の得点率を予測することには向いていません。受験者のほとんどが東大合格を視野に入れることができる成績の保持者ですから、受験生の間で差がつきにくく、偏差値が出にくい試験になります。
T君は、この2種の模試の結果から、「大学受験生全体の中では成績上位だが、東大志望者の中だけで見るとだいたい平均の位置にいる」と予測することができました。このように、母集団の質が異なる模試ですと、単純に偏差値だけを比べても適切な予測はできません。
それと、模試返却の際に気になる「大学合格の可能性」も、過去にこの模試を受けた人が、どのくらいの確率でその大学に合格したかを示すものですから、「ある模試ではA判定、でも違う模試ではC判定」ということも起こり得ることを知っておきましょう。